居候爆誕編

元地球産の人間、現在推定種族は魔族(?)な井上です。
現地人さんと初遭遇を果たしてから数ヶ月が経過しました。

気がつけば現地人さん――基、エーリヒと一緒に暮らすようになっていました。
なんで?
初見ではあんなにわたしを見てビビり散らかしていたのにどういった心境の変化なのか、わたしにはとんと分かりません。とりあえず、エーリヒの分の生活用品を用意するところから始まった数ヶ月でした。案外快適にというか、すごく助けられながら生活しています。

「おいノイエ、罠の様子を見に行くぞ」
「はぁいエーリヒ」

出会ってからしばらく経ったある日、わたしが自宅へ帰らなくてもいいの、と尋ねると(本人曰く)帰る家がないというのです。諸事情で村から追い出されたそうですが、それ以上のことを話したがらなかったのでわたしはその先の事情を知りません。

「お、しっかり獲物がかかってるな。少しはマシになったか」
「へへへ、褒められちゃった」
「最初のあれは流石に目も当てられなかった」
「、ヴッ」

けれどエーリヒがどんな経緯を持った人間でも、どんな思惑の持ち主でも、わたしにとってはどうでもいい。

「だが筋はいいんじゃないか?」
「ヴヴ?!」
「なぜ話すたび呻いてるんだ……」
「エーリヒがあげて落として上げたから……」

だってエーリヒが来てから、わたしはひとりぼっちじゃなくなったから。あと肉の調達が格段に効率化したのでもしかしたらエーリヒって神さまが遣わしてくれた天使様なのかもしれない。お星さまにお願い事したのが叶った気がめちゃくちゃするもの。

態度がちょっとデカいけど顔がいいし、狩りが上手で師匠してくれてるし、ご飯作るの上手いし。
それにこの人、否定してくるけどだいぶお人好しで優しい人間だ。
そんなの……大好きになっちゃうじゃん!

「ハア? 事実を伝えているだけだろう、呻く必要性がわからない」
「分からなくてもいいですよぅだ」

大切な大切なエーリヒ。初めて出会った人間さん。
ひとりぼっちのわたしをすくってくれたエーリヒのことを今、わたしは最大瞬間風速で大好きなんだよ。
嘘偽りなく。

 

――ところでエーリヒ。
(最初に名乗り方を間違えたせいなのは百も承知なんだけど)わたしの苗字が井上なのであって、ノイエという名前じゃないし他に名前があるんだ……あっ、全く聞いてないね。

仕方ない、呼びやすいニックネームを付けてもらったと思うことにしよう。

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