食生活振り返りと初邂逅編

地球在住人類の皆さん、こんにちは(或いは任意の挨拶)。
「ごめん寝で寝落ちるとか幼稚園児か?」とクレーム来そうだなとか思っても畢竟呑気している井上です。

でも人間に角がある世界線に生まれた覚えなかったから多分今居るここ異世界だし、事前予告なしに突然強制整形施術(と言い張る)で異世界に放り出されているのだし。
ちょっと取り乱したのくらい大目に見てほしい(大の字)。
わたしだってね、現代でやり残したこといっぱいあるんですよ。仕事の引き継ぎとか積読の山とか録り溜めてそのままのアニメとか(ゴニョゴニョ)。
ウワーッ、未練がいっぱい!
頭抱えてぇ〜〜!
今やるともれなく角に手が激突するけどぉ!

――話が逸れたので元に戻そう。

例のごめん寝から体感2~3ヶ月が経過し、無事(……無事?)洞穴に定住しています。まるっと開き直りDIY ――DIYは日曜大工って意味だけど、ここ曜日という概念が通用するかわかんないし今の暦も日付もわかんない。だから毎日が日曜日ってことでひとつ。――を嗜むようになったため生水も煮沸することが可能になり、なんとかお腹を壊すことなく健康な毎日を過ごせています。よかった。詳細は本筋に関係ないので省くけど、土器って有用性高い。文明ってすごかったんだなって再認識しました。

つまるところ、自分がYDKやればできる子でよかった。
やっぱ人間って必要に迫られればできるもんなんだな。
自画自賛して鼓舞するスタイル。
同居人はMY虚無心しかいないので。
あっ、自分で言ってかなしくなっちゃった。

閑話休題。
話を戻すが、当初食べるものは基本採集しか入手方法がなかった。そのためわたしは毎日「文明〜〜〜!(郷愁の叫び)」と鳴き声あげていた。現代からぼっちで放り出された結果縄文・弥生時代レベルの生活をするしかないとなるとかなり勝手が違ってヤバかったもんで。特に食べたいものと口にできるものに差がありすぎるというのは辛い。実際、100%ビーフパティのハンバーガーを食べたくても手持ちのドングリっぽいなにか(注釈:まあまあ美味しい)やそこら辺に生えてたキノコしか食べるものがない日が何日あったことか、もう数えるのもやめた。

毒キノコにあたってないだけマシかな。
あ、善良な人類の皆さんはそこら辺に生えてるキノコを無闇にとって食べちゃダメだぞ。最悪死ぬからね。わたしがその辺のキノコを自己判断で食べたのは、当時手持ちのドングリ擬きが尽きて餓死寸前だったという経緯からなので。
食べずに死ぬか食べてから死ぬか食べて生き残るかの3択だっただけなんだから!

「しかし動物性タンパク質が恋しい(本音)」

というわけで、最近は狩猟もやるようになりました。やはり人類には肉から得られるハッピーなホルモンが必要なのでね。あれよ、アナンダマイドって物質やつ
しかしそこら辺に鶏や豚や牛が闊歩しているわけではないので思い切り内容はジビエ(専らうさぎ)に傾いているし、おっかなびっくり狩猟なので成功率はマチマチだけど。だって狩猟なんて日常生活でほとんどやったことない。うさぎと接する機会なんて小学校の飼育委員会くらいのものだったわけで、狩猟のしの字も出てこない平穏なものだ。即ち、ズブの素人ってわけ。
それに血抜きとか解体は鶏を(祖父母監修の下に)しめたことが1度あるっきりだから知識も朧気なんだよな。もっとちゃんとやっておけばよかったと今更ながら後悔している。

「あっ、流れ星」

もっと効率的に肉を安定供給が叶う環境がほしいです(クソデカボイス)!
お星さま、わたしに清き一票をよろしくお願いします!

そんな願い事をして翌日、わたしはすごい拾いものをした。
何かって?
聞いてくれる?

「ウウ……」

――なんと人間です、初邂逅現地の人!
ついに遭遇した第1民間人(?)だ。これまで動物たちしか見かけてこなかったからちょっと感動を覚えている。
耳もまぁるくて、角もない。
ただ傷だらけなのがすごく心配で……人為的に付けられたものもないか、これ?
このまま置いておくと野生動物に襲われたりして危ない気しかしない。
唸っているところを見ると、起き上がれはしないが重体というわけでもなさそう。

わたしはこの現地人さんを前述の通り、拾うことにした。

結構大きな怪我だったせいか、看病している間発熱もして魘されているのが本当に辛そうだった。
数日付きっきりで看病したのが功を奏したか無事目覚めてくれて本当に良かったと思う。

しかし現地人さんは目覚めの第一声に「ウワーッ化け物!?」と叫んで飛び起きた。Gを見た人類みたいな俊敏な動きだった。冗談抜きにかなり傷付いた。

病み上がりでそんな急に動いたら危ないと告げる暇もなく、飛び上がった現地人さんは一瞬よろついて洞窟の壁面に身体を預ける。
大丈夫ですかと駆け寄りたかったが、化け物呼ばわりされてしまっては迂闊に近づけない。
起き抜けに角の生えた人間の風貌をした何かが顔を覗き込んでいたわけだし、それはびっくりするだろう。わたしでもそう。

加えてそういう反応をされるということはやはり、角の生えた人間というのはこの世界でもイレギュラーなものなのだということがわかった。わかってしまった。

やっぱりわたしは一般的な人類でない見た目になってしまったんだ。きっと、人間の類ですらないのかもしれない。
わたしはわたしであるのに。

「…………、」

けれどこれだけは主張したかった。

「わたし悪いスライムじゃないよ?!!!!」
「スライムってなんだよおおおお前魔族だろ?!」
「なに?! 魔族って何ですか?! あと悪人じゃないですよもしその魔族だったとしても!」
「魔族を知らないのかお前魔族なのに?!」
「知りませんよ起きたらこの角ついててるしずっとひとりで生活してきたんですからね!」
「どういうことだ説明しろ!(ヤケクソ)」
「いいですよ!!!(ヤケクソ)」

この後数時間かけてめちゃくちゃ話し合った。

案外ノリがいい現地人さんはわたしを化け物呼ばわりした割によく逃げ出さなかったなと思う。後日本人にそう言うと逃げられるだけの余力がそのときなかっただけだと返されたけれど。
多分それは双方の視点からしても嘘偽りなく事実である。しかしほかにも理由というか判断材料はあったろうに、あえて「逃げられるだけの余力がなかったから」とだけ告げるなんて真っ直ぐな人なんだなとわたしは勝手にほっこりした。

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